糸井正博の「森の音楽と笛のおはなし」

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こんにちは、糸井正博です。
フルートは木管楽器。多彩な音色と表現を可能にしています。
今回はそんなイメージが湧いてくるような、美しく神秘的な自然、特に森とフルートの関わり合いを中心にいくつかお話しを書いてみようと思います。

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その8「続々・歴史にまつわる笛のお話」

 前回までは日本の笛の話でしたので、今回はヨーロッパの笛の話です。
日本に限らず世界中で、昔から人間の息を吹き込んで音を出す笛には不思議な力があると思われてきましたので、ヨーロッパでもギリシャ神話のころから、笛に関する話がいくつも残されています。

ギリシャ神話では笛をつくり出したのは芸術の神のアテネだといわれていますが、アテネ自身は笛を吹くと自慢の美貌をそこねると考えて捨ててしまいました。このアテネの捨てた笛を拾ったのが牧神パンと同じように下半身が山羊の半獣神のマルシュアスで、彼が吹く笛の音には人間はもちろんありとあらゆる生き物がうっとりと聞き惚れるほどの腕前になりました。

「この世で最高の演奏家」「神のような笛」と噂が広まるにつれ、それを聞いた音楽の神アポロンはプライドを傷つけられ、激怒してマルシュアスと音楽の試合をして優劣を決することになりました。
現在のコンクールの始まりともいうべき、イベントですが、命がけの試合でしたので勝った方は相手に何をしてもかまわないという取り決めになっていました。
アポロンは堅琴、マルシュアスは笛(アワロスという縦笛)の演奏で始まりました。最初はマルシュアスの笛の方が優勢でした。アポロンは次に堅琴を逆さまに持って情熱的に弾き始めます。その見事さにいならぶ神も人も圧倒されてしまい、賞賛の嵐が巻き起こりました。勝ち誇ったアポロンはマルシュアスに、おまえも笛を逆さまにして吹いてみろと言ったのです。考えるまでもなく笛をさかさまに吹いても出るはずありません。負けたマルシュアスは、アポロンに皮を剥がされ殺されてしまいました。

アポロンと音楽の試合をして負けた笛吹きはもう一人います。パンの笛で有名な牧神パンが、やはり成り行きから試合をするハメになってしまいました。この試合は正式なものではなく、審査も山の神トロモスで音楽に関する神々は出席しませんでしたが、周りには山の妖精たちや羊飼いの農夫などが集まっていました。その中に欲深いために、手でふれたものがすべて金に変わってしまうようにされてしまったミダス王が混じっていました。

試合はまずパンが自慢の笛で陽気で楽しい音楽を演奏しました。次にアポロンが象牙の堅琴で静かに弾き始めて神々を讃える歌を歌いました。その音楽の格調の高さ、優雅さに誰の目にもアポロンの勝ちは明白でした。ところがミダス王だけがパンの笛の方が楽しくて良かったと言ったのです。アポロンは怒って「お前の耳は音楽がまったくわからないロバの耳だ!」と言って、ミダス王も耳をロバの耳に変えてしまいました。ミダス王は耳を隠す為にいつも帽子をかぶりました。でも髪の毛を切るために床屋を呼んだ時だけは帽子をとらなねばなりません。それで床屋には「ロバの耳のことは絶対に言ってはならない。言ったら死刑にする」と厳命しました。しかし、言ってはならないと言われるとますます言いたくなるのが人情というもの。とうとう我慢できなくなった床屋は川岸に行って穴を掘り、その中に「王様の耳はロバの耳!」と叫んでからていねいに土で埋めて帰りました。しかし、その川岸から生えた篳の葉からは風が吹く度に「王様の耳はロバの耳!」というささやき声が聞こえ、いつの間にか人々の間に噂が広まってしまいました。

試合に負けたパンについては何もおとがめがなかったようですが、ギリシャ神話にでてくる神様は自分の存在を危うくする相手には情け容赦ない残酷な神様だったようです。

以上で糸井正博さんの「森の音楽と笛のおはなし」を終了します。

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