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白水裕憲さんに聞く
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プロ・オーケストラ奏者の方々による「プロの感覚」シリーズ。今回は地方オーケストラの 草分け的存在として知られる群馬交響楽団の白水裕憲さんにお話を伺います。

白水裕憲さんのプロフィールは、こちら


2007年04月13日 吹奏楽を愛好する皆さんへのメッセージ 〜その3〜
2007年03月08日 吹奏楽を愛好する皆さんへのメッセージ 〜その2〜
2007年01月25日 吹奏楽を愛好する皆さんへのメッセージ 〜その1〜
2006年11月29日 群馬(高崎)という土地に根ざして
2006年10月31日 練習
2006年10月19日 ソロ演奏について
2006年10月06日 緊張を楽しむ
【注意】スタッフが提示した「テーマ」に対してあくまで「個人の感覚」を自由に語っていただいたもので、「他人へのアドバイス」や「お勧め」では一切ありません。感覚の話なので抽象的な表現もありますが、余分な解釈を加えず出来るだけご本人の表現そのままを引用しています。

吹奏楽を愛好する皆さんへのメッセージ 〜その3〜

過去2回でフルートの頭部管の抜き方と、息の強さのお話をしましたが、今回はピッコロについてです。

ピッコロも、フルートと基本的な構造や音を出す仕組みは同じですから、フルートと同じ様な音楽的役割をするときは、基本的に同じ事を心がける必要があると思います。

しかし、それに加えて吹奏楽やオーケストラでは、作曲家から金管楽器や打楽器のような役割を求められる事も少なくありません。もともと最高音域を担当するわけですから、逃げも隠れも出来ない「切り込み隊長」のような気持ちが必要になってきます。
そういった場合、私はピッコロの頭部管をかなり抜いて、構える角度を少し外向きにして健康的な音で吹いています。時には、コルクが見えるくらい抜く事もあります。常にその状態で吹くと、中低音や小さな音が必要な時は、音程がぶら下がってしまいますから、曲の中でも臨機応変に、状況や役割に合わせる注意が必要です。私は数本のピッコロを使い分ける事もあります。

現代のフルートは完成度がかなり高く、有名メーカーの楽器であれば、どこの楽器でも、正しい吹き方をすれば幅広い表現が可能になってきました。しかし、ピッコロの場合は、多くの楽器がまだその域に達していません。ですから、もし経済的に余裕があれば、できるだけ吹き易い楽器を選ぶ事も大切になってきます。 これについては、日本のフルートメーカー各社にも、今後益々のご努力をお願いしたいと思っています。

吹奏楽を愛好する皆さんへのメッセージ 〜その2〜

前回は頭部管の抜き方のお話をしましたので、今回は息の強さのお話をいたします。

前回の話題の中で15mm〜20 mm 抜いて吹いている人は、かなり乱暴に強く吹いていると思われます。その場合PやPPで柔らかく吹くと音程が随分下がってしまいます。 おそらく、金管楽器や打楽器、クラリネットやサックスの音圧に圧倒されて、無意識のうちにそういう吹き方になってしまったか、指揮者や周りの人にもっと大きな音を要求されて回りの音圧に負けない様に吹いてしまっているようです。

しかしそういう吹き方では、 決して音楽的な大きな音は出ていないはずです。フルートという楽器は、強く吹けば必ずしも大きな音が出るわけではありません。もちろん音域や、表情によっては横隔膜で支えられたある程度の息の圧力は必要ですが、楽器を響かせるという意識が最も重要です。楽器を無理やりに鳴らすというイメージは禁物です。上手に響かす事ができれば、中学生の女性フルーティストなら十分に大きな音で歌うことができます。

あとは、アタック(タンギング)で強さ、弱さ、やさしさ、あらあらしさ等、いろんな表情を作ってみましょう。 グランドピアノを思い出してみればわかりますが、強いタッチでハンマーが弦を打てば、大きな音、やさしく打てば繊細な音がしますね。これがタンギングだと思って下さい。フルートは オルガンや、ブザーのように息のパワーで音量を出そうとするのは、ほとんどの場合ナンセンスです。充分な注意が必要です。

今回は、フルートについてお話をしましたが、ピッコロについては、私はまた違った考えを持っています。
次回はそのことをお話したいと思います。

吹奏楽を愛好する皆さんへのメッセージ 〜その1〜

これから新年度を迎え、私は各地の小中高校へのブラス指導に出かける事が多くなります。 これは、もう私にとってはライフワークのひとつになっています。

今から十数年前、群馬に来てすぐの頃ですが、依頼を受けて各地の学校を指導に訪問して、 とても驚きました。夏の暑い盛りの空調も無い環境という条件もあったのですが、そこで一生懸命ブラスの練習をしていたかわいいフルーティスト達は、皆、頭部管を 1.5〜2.0cm 位抜いて、元気よく、というよりフルートの域を超えて力強く吹いていました。ちなみに、私がその楽器をそのまま吹いてみると、見事に半音近く下の音しか出ないのです。しかし、 みんなはある程度訓練されているので、それに近い音が出ているのです。これは、なかなかすごい状況でした。ただ、当然作曲家が要求したような表情が出ないばかりか、特にフルート同士でも綺麗にハモることはできません。案の定、フルートの美しいソロになると音程は下がり、暗い響きになり、力んで吹いていますからヴィヴラートをかけることも出来ない、表情の無い演奏になってしまいます。

私はそれ以来、各地の吹奏楽関係者、地元の楽器店、学校の先生と相談して、積極的に自ら指導に出かける様にしました。それは、地味で結構骨の折れる根気のいる作業でしたが、それから10年以上の時間が経過し、私が回る多くの学校ではそういう傾向は少なくなってきました。しかし、新しく訪れる学校ではまだ見られます。おそらく、フルートの専門の指導者がいない学校では、全国的に多くみられるのではないでしょうか?

日本製のフルートは今や世界的に評価が高く、ほとんどどのメーカーの楽器でもある程度 良い音程で演奏する事が可能です。頭部管の抜き方は、空調の整った環境では 2mm〜7mm (吹き方や、角度等人それぞれですから)、真夏の汗だくの日でも、10mm が限度でしょう。夏でもコンクールや演奏会場では冷房が利いている事もありますから、楽器をさわった時の体感温度によって調整が必要ですね。

あとは、吹き方です。長くなってしまいますので、この続きは次回にします。
新学期が始まるまでに、皆さんにお伝えしたいメッセージがまだまだたくさんあります。 待っていて下さい。

群馬(高崎)という土地に根ざして

私は九州、 福岡市 の出身で、学生時代は京都(市立芸大)、オーケストラは広島(広響)、そして群響のある高崎、と日本を東西に動いてきました。最初は、群馬県という見知らぬ土地へ一人で来てとても戸惑いました。

あれからいつの間にか14年という時間が経過して、今はそれが自分の生き方、考え方や演奏活動を豊かにしてくれたような気がしています。これからは、群響のメンバーとしても、そして群馬県民・高崎市民としても、どれだけ貢献できるかが目標になってきます。

そのためには音楽性のみならず、私自身の人間的な成長も不可欠ですね。地元の人たちと密着する事によって社会人としての自覚も強くなりました。

レッスンをしていると、学生さんだけでなく、今や幅広い年齢層のいろいろな社会的立場の方が来てくださっています。受験生と一緒になって一流を目指して一生懸命教えることも、ご当地のプロのフルート奏者としてはとても重要な仕事です。また自分の両親のような年齢の方をご指導申し上げ、その方の生き甲斐になるよう導く事もまた大きな仕事です。楽器も手が届かないような小学校低学年の児童は、しかしみんな天才に見えます。

生涯学習が謳われる時代、成人で職業を持っていてレッスンに来てくださる方が、今はとても多くなっています。多くはブラスの経験者で、学生の頃から一生懸命練習していて、就職してから始めてレッスンを経験される方で、こういう方は本当にフルートがお好きで、練習できる時間は少ないようですが、長く続きとても上手くなられています。
どなたにも言えることですが、「すきこそ物の上手なり」とも「継続は力なり」ともいいますが、「下手の横好き」でも結構ですから、続けてさえいただければ、それなりに楽しんでもらえる自信が私にもできました。

練習

前に緊張を楽しむ話をしましたが、それにはやはり練習する事が特に大切です。指が不安だとしたらそこばかりいろいろな方法で不安がなくなるまで練習します。学生当時、私の先生はプロになりたくて一日最低6時間は練習したと聴き、私は毎日8時間〜12時間を目標に練習していました。別に量を誇るのではないけれどとにかく練習がしたかった、義務感に駆られてではないのです。

周りからの刺激も大事でしたね。例えば仲間同士で酒を飲んでいると音楽の話題になり、彼等のエネルギーが伝わってきて、早く練習がしたい、早く朝にならないかと思って眠れなくなったりしたものです。とにかくまず豊富な練習量は必要でしょう。

練習する時に持つイメージもとても大切です。その曲自体に対するイメージがより豊かに、具体的になるよう心がける必要があります。それがなければ、説得力のある、人を感動させる演奏はできません。
それには想像力が必要ですが、美しい風景、絵画を見る事、美味しいものを飲んで食べる事、多種多様な「遊び」を楽しむなど、そういった人間的な余裕を持つ事がそれを助けてくれます。

演奏している自分をイメージすることもあります。本番が近ければそのステージで本番をやっているイメージを持って練習します。日々の日課的練習では例えばベルリン・フィルをバックに協奏曲を吹いているイメージとか、また音階やロングトーンも実際の曲の一部だと思って、そういう曲を大舞台で吹いているつもりで、具体的なイメージを持って練習すると効果的です。それは、将来の夢にも発展していきます。

ソロ演奏について

オーケストラの中でソロを吹くといのは、何よりもすばらしい事です。正にフルーティスト冥利に尽きるという言葉がぴったりでしょう。何十人、多いときは百人を超えるプレーヤーが伴奏してくれる中、自分の音楽ができるわけで、日常的にそういう機会があるということは、コンチェルトのソリスト以上に幸せな事です。

でも、だからこそ緊張も少なくはありません。曲によっては、自分の演奏次第で演奏会の雰囲気を大きく変えてしまう危険性もあります。

一番怖いのは、練習の初日ですね。特にオーケストラがよくやる曲であれば、メンバーの皆はリラックスしてよく聴いています。緊張しているのは自分だけですから、何年たってもオーディションを受けている感覚です。

この緊張感を味わえる事、これがプロのフルート奏者の醍醐味です。

緊張を楽しむ

よく聞かれる話ですが、私は今でも演奏する時とても緊張しています。しかしあがっている感じではないですね。ここが重要だと思うんです。怖い気持ちと同時にそれを克服したいという欲求も存在していて、消極的になる事はないようにしています。緊張を楽しんでいる、と言ったらいいでしょうか。

そういった感覚を身につけるにはやはり経験の質と量が大事だと思います。専門の音楽教育を受けていると、そういった機会は、たくさんあります。先生のレッスンを受ける事は既に本番と思うべきですし、発表会で演奏する事、コンクールに出ること、試験やオーディション等々、一回一回が貴重な舞台経験の積み重ねになり緊張を自分のものにしていく場になります。

とにかくその経験の積み重ねが大切なことではないでしょうか。

次回は「ソロ演奏について」です。

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